表札を出したくない人の表札「 中村 」さん

表札を出したくない人の表札「 中村 」さん

[ 表札を出したくない人の表札 「 NAKAMURA 」 【 中村 】 本物の真鍮で作ったサインプレート ]

「歪んだ時の館」


ある静かな村に、中村さんという男が住んでいました。彼は周囲から謎めいた存在として知られており、村の人々は彼のことをあまり話題にしませんでした。彼が住む家は村はずれの古びた洋館で、そこには不思議なことが起こると噂されていました。

ある晩、村で最も若い女性、佐藤さんが失踪しました。村中が捜索に乗り出しましたが、手がかりはまったく見つかりません。ある日、村の噂好きな老人がぽつりと「中村さんの家が怪しい」と言い出しました。誰もがその言葉を聞いて一瞬不安がよぎりましたが、村では暗黙の了解として、中村さんに関わることは避けるべきだとされていたのです。

しかし、村長の伊藤さんは、どうしてもその疑念を振り払うことができませんでした。彼は一人で中村さんの家を訪ねることを決意します。夜明け前、中村さんの洋館にたどり着いた伊藤さんは、戸を叩きました。しばらくして、年老いた中村さんが現れ、静かに伊藤さんを招き入れました。

中村さんの家の中は驚くほど美しく整えられていましたが、どこか現実味のない不思議な空気が漂っていました。中村さんは何も言わず、ただ無表情で伊藤さんを見つめていました。沈黙の中で、伊藤さんはふと一枚の古い絵画に目を留めました。それはどこかで見覚えのある顔でした。絵に描かれていたのは、失踪した佐藤さんだったのです。

「これは…佐藤さんでは?」と伊藤さんが尋ねると、中村さんはゆっくりと頷きました。「彼女はまだここにいます」と中村さんは静かに言いました。「しかし、もう戻ることはできないのです。」

伊藤さんは戦慄を覚えました。「どういうことですか?」

「この家には、時間が歪む場所があるのです。彼女はその時間の中に囚われてしまったのです。」中村さんは静かに語り始めました。「かつて私も、その歪んだ時間の中に入ってしまった。しかし、私は運よく戻ってこれたのです。でも、佐藤さんは…」

中村さんの話に驚愕した伊藤さんは、家を飛び出しようとしましたが、ふと気づくと彼自身も家の外に出られなくなっていました。外へと続くはずのドアが、どこにも見当たらないのです。

「君も、もう遅いようだ。」中村さんの声が遠くから響きました。「ここに来た者は、もう戻れない。私たちの時間は、ここで永遠に続くのです。」

こうして、中村さんと伊藤さんは、現実と異なる時間の中で、永遠に生き続けることとなったのです。