表札を出したくない人の表札「高橋」さん

表札を出したくない人の表札「高橋」さん

[ 表札を出したくない人の表札 「 TAKAHASHI 」 【 高橋 】 本物の真鍮で作ったサインプレート ]

「鏡の中の家」


ある夜、東京の静かな住宅街に住む高橋さんは、不思議な夢を見た。夢の中で彼は、古びた木造の家の前に立っていた。家はどこか懐かしい気がするが、思い出せない。玄関の扉がきしむ音を立てながら開いた。

「おかえりなさい、高橋さん。」

家の中から、柔らかな声が聞こえた。その声は暖かく優しかったが、どこか現実とは異なる感覚があった。高橋さんは、不思議な引力に引き寄せられるように、家の中に足を踏み入れた。部屋には古い家具が並び、壁には古びた写真がかかっていた。写真には、どれも自分とよく似た男が写っていたが、彼の記憶にはまったくないものばかりだ。

「あなたは誰なんですか?」と、高橋さんは誰にともなく問いかけた。

その瞬間、背後で扉が閉まる音がした。振り返ると、そこには全く見知らぬ人物が立っていた。その人物は、高橋さんと瓜二つだった。いや、それ以上に奇妙なことに、その人物は微笑みながら高橋さんに向かって歩み寄ってくる。

「僕は…お前だよ。」

その言葉に、高橋さんの頭が混乱し始めた。しかし、何よりも不気味だったのは、そのもう一人の高橋さんの目の奥にある無限の暗闇。まるでそこには、高橋さんが今まで経験したことのない謎と恐怖が詰まっているかのようだった。

高橋さんは恐る恐る後ずさりしようとしたが、足が動かない。まるで自分の体がその場に縛り付けられたかのようだ。

「逃げられないよ。もう一度、家に帰ったんだから。」

気づけば、高橋さんは夢の中ではなく、現実の世界で自分の部屋にいた。だが、何かが違う。鏡を覗き込むと、そこに映っている自分の顔は、自分ではなかった。

「僕は…誰なんだ?」

それ以来、高橋さんは、自分の中で何かが入れ替わったような感覚を抱えながら、静かに生き続けている。それが夢だったのか、現実だったのか、誰も知ることはない。ただ一つ確かなのは、彼が再びその「家」に帰ることを、どこかで誰かが待っているということだ。