[ 表札を出したくない人の表札 「 YAMADA 」 【 山田 】 本物の真鍮で作ったサインプレート ]
「月夜の道」
山田さんは、いつものように夜の散歩をしていた。いつも通りの静かな住宅街、しかしこの夜だけは何かが違った。道の先にある古びた街灯が、ぼんやりとした明かりを放ち、不規則に揺れ動いていた。まるで月が不穏な力に引き寄せられているかのように、半月が雲の影に隠れたり、また現れたりを繰り返す。
ふと、山田さんの足が止まる。空中に浮かび上がる奇妙なシンボルが、微かに輝きながら彼を囲んでいた。その光はどこか人間の目には見えない、不思議な言語のようで、山田さんの視界にしっかりと刻み込まれる。近くの建物は、ねじれ、傾き、まるで自分の意思を持ったかのように、山田さんに向かって寄り添っているように見えた。
一歩進むごとに、世界がゆっくりと変わり始める感覚が山田さんの体を包み込んでいった。まるでこの街全体が、彼だけのために用意された夢の中の世界であるかのようだった。手を伸ばしてその光るシンボルに触れようとすると、指先から温かい波動が伝わり、不思議な感覚が彼を満たした。次の瞬間、全てが元に戻り、静寂が彼を包み込んだ。
この夜、山田さんはただの散歩のつもりだったが、目覚めるとその出来事が現実だったのか夢だったのか、区別がつかなくなっていた。





